喪女の結婚

あるいは幽霊を見ないこと

傍若無人なアヒージョ

 定期的にアヒージョ衝動に駆られる。アヒージョがどうしても食べたくなるのだ。小洒落た名前ながら、内訳は食べるラー油に等しい。具、油、香辛料。ワインに合う油でしかないのになんか小洒落ていてい悔しい。それでも油脂が食べたい。たとえ家中近所中にニンニクの匂いをばらまいて静謐な夜を壊すことになっても、アヒージョ欲求に抗えないのであった。にんにくが最後の二かけだった。薄切りにして、オリーブオイルで弱く火を通す。果たして家族から怒鳴られる。こんな悪い子でごめんなさい。にんにくテロリズムの戦火が近所中に燃え渡り、換気扇をつけているのかいないのか分からなくなる、余り物(キノコと、玉ねぎ)を入れて煮る。油脂で煮るってすごい発想だな、と、保存のためなのだろうけど、すごい発想だなと恐れ入る。夜9時すぎてアヒージョを食べた。にんにくの匂いは、食後16時間は残ると聞いて、本丸のにんにくと油を食べるのをためらう。とりあえずラップでぐるぐる巻きにして冷蔵庫へ入れて問題を先送りにする。見ないことは解決しないことではない。

 体脂肪率が34パーセントだった。体重69キロ。はっきりいうまでもなく、肥満であった。まあ、上記の食生活をしている時点で自業自得お察しなのだが、変に我慢してバランスを崩すよりかはましなのかなあとも思う。そう思えるのは、この体重はマックスではないからでもある。少年漫画の主人公が土壇場で底なしの力を発揮するように、底なしのデブなのであった。

 昨夜は23時には眠ったはずなのに、7時をすぎて目がさめる。寝酒が良くないのだろう。ちょうど酒が切れてしまったので、しばらく飲まずに暮らしてみたい。ブラックニッカの限定瓶、クロスオーバーは、もともとおひげのおじさんが好きなこともあり、甘みと苦味が増強された感じのブレンドはすごく好みで、さらにホットミルクに入れても美味で飲みやすかったのだが、如何せんいささか予算オーバーでもあった。もう彼に会うことはないだろうが、どこかの酒売り場で出会ったら、そして私が調子に乗って財布が緩みきっていれば、再びの逢瀬としけこみたい。瀬をはやみ。その後がはやみゆうとかもこみちとかしか思い出せずに、悲しかった。